100年の孤独

I only sleep with people I love, which is why I have insomnia

番外編 3/22  Perfume~Complete Best~分析

mimiminsu2007-10-23

このアルバムはアイドルソングメソッドに忠実な後期インディ時代のシングル「モノクロームエフェクト」「ビタミンドロップ」「スウィートドーナッツ」「引力」とメジャーデビュー以降の7曲そしてアルバム書下ろしの「パーフェクトスター・パーフェクトスタイル」と言う形にブロック分けする事でperfumeの音楽性の変遷を理解する事が出来ます。

1曲目の「パーフェクトスター・パーフェクトスタイル」はSTARDUSTの「Music Sounds Better With You」を引用した倍音豊かなブリープ・シンセの立体的な音像が心地よいウェルメイドな1曲。
これはメロディの引用には極端にヒステリックな反面、和声やリズム構造については全くといっていいほど言及する事が無い消費者の特徴をよく把握した上手い曲の作り方です。もちろんそのまま引っ張って貼り付けて終わりって分けじゃなくアレンジも効いているし、ワンモードでぐるぐる回すようなファンク構造ではなく「カラオケで歌いやすい」という日本のポピュラーミュージックシーンで成功するための定石を忠実に守ったコードが進行して物語が紡がれていく形の曲構成になっています。
この曲はアルバム唯一の書き下ろしと言う事でこれからのPerfumeの方向性を示す重要な1曲でしょう。

そして2〜4目までSF的な世界観を共有するメジャーデビュー以降のシングル3部作が続きます。
この3曲はロボットボイス一歩手前までガンガンにボーカルにエフェクトをかけてアイドルとして通用するギリギリのラインまでDAFT PUNKリスペクトなテイストになっています。
特にデビュー曲である「リニアモーターガール」は音色やボーカルの可愛さでごまかされているものの「Aメロ→Bメロ→サビ」という構成をとっぱらってワンモードでぐるぐると同じ景色を回し続けるというフロア対応のコアな構成でSF3部作の世界観を脳に刷り込んでくる侮れない1曲です。BPMに関してはアイドルマナーである「PPPH対応」を放棄してハウス方面にすり寄っていると言えるでしょう。

2曲目の「コンピュターシティ」は歌謡曲テクノ/ハウスのお手本のような秀作でPVも可愛いです。おそらく今のPerfumeの人気の基礎はこの曲で作られたんじゃないかと思われます。「リニアモーターガール」ではDEGITAL LOVEを直接的に引用した後ろめたさがそうさせたのか音色(特に高音)の選び方がフレンチタッチで多用されるそれでなくどちらかと言うとギーク/ナードな方面にアピールしたものになっていますが、今作を境にPerfumeの音色的な特徴は90年代に流行して2004年ごろシカゴハウスと融合した事で再評価の機運が高まったブリープサウンドを多様する形へと大きく変化していきます。

端的に言うと、こういったUK/フレンチ・ダンスミュージックを日本人の耳になじむ歌謡曲的な書法で再解釈するという所にメジャーデビュー以降のPerfumeの基本コンセプトがあるのではないでしょうか。

3曲目の「エレクトロワールド」は3部作の中では個人的に一番好きな曲です。根本的なところでは「コンピュターシティ」で打ち立てられた方法論を忠実に継承しつつも、曲の肌触りはLFOからDAFT PUNKへ回帰。しかし今回はリニアモーターガールとは違い、ファンクからテクノに継承された「ループで躍らせる」と言ったアプローチではなく、ディスコからハウスに受け継がれた派手なドミナントモーションの輪転を軸にした「歌心で牽引する」形のアプローチになっています。その他随所で垣間見える細かいところまで気配りのきいた繊細さと、俺のような素人が聞いてもちょっとぎょっとする位のあざとさが上手く使い分けられた、3部作のトリを飾るにふさわしい一曲だと思います。特にサビの味付けに使われているギターがいい味を出していますね。あとはやっぱりPVが可愛いです。のっちが好きです。

他の曲もそれぞれみる所はあるんですがやっぱりこのシングル3部作と「パーフェクトスター・パーフェクトスタイル」の印象が強く、実際それ以降の活動を見てもこの路線が続いていて嬉しい限りです。というわけで結論としてはのっちが可愛いと言う事でまとめたいと思います。