100年の孤独

I only sleep with people I love, which is why I have insomnia

TOKYO IDOL FESTIVAL

先週末は有香ちゃんに誘われて、お台場でやっているTIFに遊びに行ってきた。
TIFというのはトーキョーアイドルフェスティバルの略。フジロックとかサマーソニックのノリで沢山のアイドルが野外で代わる代わるステージを行う催し物で、今年で3回目。今はこんなイベントがあるんだね。全然知らなかった。

有香ちゃんからこの誘いのメールを受け取ったときはびっくりして三回読み返してしまった。わたしたちが事務所をクビになったのは高校卒業と同時だった。その時のわたしたちがどんなにみじめだったか。小中高と積み上げてきた日々の生活、いろいろな人生の岐路での選択、それらが一度に否定される感じ。どうやっても言い逃れできない、逃避のしようのない形で「あなたたちは失敗しました」と言われるのは、とてもつらい。とてもとてもつらくてわーわー泣いてしまった。あの時はまだ子供だったし、人生はこの先も随分と続いていくということについての実感も今以上に無くて、もうわたしの人生はおしまいだとまで思ったものです。

メールの返信で、昔お世話になった事務所の山本さんにお願いすれば関係者で入れてくれるんじゃない?と提案してみたんだけど、有香ちゃんはもうチケットを買っていて(私の分まで)結局普通のお客さんに混じってステージを見に行った。

結論から言うと、行って良かった。うん。良かった。あのみじめな卒業式以来、わたしたちはアイドルというものを自分から遠ざけるようになっていた。それは単純に嫌悪するのとも少し違って、まるでこの世からアイドルというものが存在しないかのように、意識をフィルタリングすると言うか、脳を調律するというか、とにかく自分の生活から「アイドル」を締め出すようになっていた。でも、それじゃあいけない。自分の人生の大半を費やしたものを、そんな簡単に全否定しまうのはとてもこわい。有香ちゃんはそれに気づいたんだと思う。

真夏の日差しの中で見るアイドルはとっても楽しかった。だって想像以上のかわいさで想像以上にきれいだったんだもの。だいすきだいすきって思った。最初のほうにやったグループで、ピンクの衣装の子が振りを大きく間違えて青ざめてるのを見て、昔を思い出して喉のところがくひーってなった。「東京女子流」も「ドロシーリトルハッピー」もかわいすぎたのでなんだよなんだよと思った。
あと、お客さんもすごいなと思った。なんだか宗教画みたいだった。大学の教養の授業で見た宗教画で乳房を切り取られそうになってる女の子の絵と、女の人に首をぐいぐい切られてる男のひとの絵があって、なんだかそれを思い出した。もしわたしが昔の人で、宗教の代わりにアイドルがそこにあったら、私はアイドルに熱狂的に恋しちゃうんじゃないかと思う。アイドルが宗教じゃなくてよかった。宗教がアイドルじゃなくてよかった。なんの祈りもなく愛してる。

イベントは夜もずっと続いていたんだけど、わたしたちは夕方ごろにはもうへとへとに疲れてしまって途中で帰ることにした。お台場の夕日は怖いくらいに鮮やかで、まぶしかった。日が暮れるのが、果実が腐り落ちるみたいだって言った人がいた。その瞬間世界は腐れて醸造されてアルコールになるのだって。だから私たちは酔っ払いなのだって。その人は日の出は世界の瞳孔がひらいてゆく様だとも言った。死んだ世界を愛撫するから私たちは変態なのだって。わたしは有香ちゃんに「夕日が落ちるのって、果物が腐り落ちるみたいだね」って言った。有香ちゃんは笑いながら「何それ?」と言って目を丸くした。わたしは「今日、誘ってくれてありがとう」って言って、そんでへらへら笑った。有香ちゃんも笑った。わたしはさっきの言葉を思い出して、変態が気取ってどうすんだよって思いながら笑った。