100年の孤独

I only sleep with people I love, which is why I have insomnia

夜想

やさぐれたいな。やさぐれたいな。などとやくたいもないことを思いながら海沿いの街路をてくてく歩く。
俺はあの常夜灯に献身したい。大好きな女の子からもらったメールの、句読点を舐めたい。靴の紐を結びなおそうとうつむくその度に、いつも誰かのことを思い出していたい。犬に吠えられて、足りないのは余裕だろうかと頭をかかえたり、ポケットから紙袋で包んだウイスキーの小瓶を取り出して、こっそり中に入った蜂蜜を舐めたい。結婚して子供を3人もうけ、それぞれの名前を「論理的に正しい」「技術的に正しい」「法律的に正しい」と名づけたい。

眠る前、すべての運命的でない行為に接吻する。知性とは無縁の人生だった。風邪が治ったと思って外に出て、帰るころにまた風邪をひいているような男だ。いつまでたっても子供なので、この先何度もたっといものから逃げ出すだろう。
人間は23歳の夏の午後に数時間だけまともな判断が出来るのだ。それ以前は全て若さゆえに、それ以後は全て老いゆえに、まともな判断は出来ない。この先、なくてもいいものがあるということに何度感謝し、何年の夜を安堵するのか。なくてはならないものが未だあるということに、どれほど恐怖するのか。怖がりだからどうにもだめだな。そんなに上手に、たたらも踏めない。