100年の孤独

I only sleep with people I love, which is why I have insomnia

飴をもらった


新入社員の頃、他部署の先輩にひどく憧れていた事がった。
その先輩の名は西脇と言った。西脇さんは課内で「伝説の西脇さん」と呼ばれていた。
伝説の西脇さんがどんな人なのか、私は知らなかった。ただ、伝説の西脇さんが素晴らしく徳の高い人物だという事は知っていた。
課内で何か困ったことがあると、皆が伝説の西脇さんの名前を出す。「あぁその設計なら伝説の西脇さんに聞くと分かるよ」「故障だと思ったら、自分で電源周りだけ確認して、それでもダメなら伝説の西脇さんに言って直してもらいな」他部署の人間であるにもかかわらず、皆が伝説の西脇さんを頼った。
ある日、主任から「大本さんこの書類、伝説の西脇さんに渡してきて」と頼まれた。私はドキドキしながら「どこにいらっしゃるのですか?」と聞き返したら、「伝説の西脇さんなんだから伝説の部屋に決まってんだろ。 3階の奥だよ」と言われた。伝説の部屋という言葉にわくわくしながら3階の奥へ行くと「電気設備課」があった。西脇さんはとても優しく、書類を運んできた私に飴をくれた。