100年の孤独

I only sleep with people I love, which is why I have insomnia

2013-09-01から1ヶ月間の記事一覧

Closing Ward 5

夜中に、物音で目が覚めた。ここでは定期的に誰かしらが奇声を上げるので(夜中は特に)大抵の物音には睡眠を邪魔されるようなことは無いのだけれど、その音は違った。それは、笑い声を早送りにしたものを何度もループして再生したみたいだった。でもその声…

Closing Ward 4

ある日、二人目のゆかちゃんが入ってきた。わたしたちは区別するために「樫野さん」と苗字で呼んだ。本物のゆかちゃんはただのゆかちゃん。 二人のゆかちゃんは友達になった。わたしと綾香ちゃんと二人のゆかちゃんは、よく看護婦詰め所の前の床に座ってタバ…

Closing Ward 3

ゆかちゃんがまた逃げた。みんなちょっと悲しかった。だって、ゆかちゃんがいると活気があったから。辛気臭い病院の中で、ゆかちゃんの周りだけが華やいで見えた。一日でもゆかちゃんが居なくなるとみんな悲しい気分になる。ゆかちゃんの周りは、まるで空気…

Closing Ward 2

仲間の一人は、自分に火をつけた子だった。彼女はガソリンを使った。その頃はまだ、運転できる年齢ではなかった。どうやってガソリンを手に入れたのだろう。近所のガソリンスタンドまで行って「お父さんの車がガス欠なの」と言ったのだろうか。どんな表情で…

Closing Ward 1

「ニキビが出来てるね」医者が言った。 誰も気づかなければいいと思っていたのに。 「いじったな」医者はまた言った。 その朝起きたとき、ニキビはちょうど潰したくなるくらいの大きさだった。ニキビは開放されたがっていた。血が出るまで押しつぶして白い小…