100年の孤独

I only sleep with people I love, which is why I have insomnia

こんばんわ。椎名彩花です。


近所のブックオフでワンピースを立ち読みで全巻読破してしまい、とうとう人生に行き詰ったので、気分を変えようと思っておばあちゃんの家に遊びにいった。少しゆっくりして自分と向き合おう、自分が本当にやりたいことは何のか(立ち読みではないはずだ)考えようと思ったんだけども、向き合う自分の所在が分からなかったので、しかたなく街を散策した。

長い坂を下ったり、また坂を上ったりして、熱帯魚とか、観賞用の魚をたくさん売っているお店に入って、水槽のあいだの道を行ったり来たりしていたら午後が終わった。水槽が青く光っていてそれ以外のところはぜんぶ暗く見えて、それが好きだった。魚の名前ってなんであんなに難しいんだろうと思う。とうてい覚えられそうもない。

帰り道にお肉屋さんでコロッケを買った。知らない建物の外付けの非常階段を7階分のぼって、おばあちゃんの家から借りてきた古い映画のパンフレットを見ながら、そこでコロッケを食べた。川向こうを電車がまっすぐ走っていって、そのまっすぐさに心を奪われた。コロッケの衣がさくさくと喉に刺さって、東京に帰りたくなった。

この街にはおいしいコロッケと、まっすぐ走る電車、あとむずかしい名前の熱帯魚はあるのだけれど、あるのはだいたいそれで全部。私の心を癒す消費グッズが他には何もない。空気はおいしいけれども、おいしい空気で癒されるような、世界に対して注意力を持っている人は、都会の朝焼けでも癒されただろうし、窓の外に広がる街頭のきらめきや、マンションの外側の階段でともる蛍のような煙草の火でも癒される。そもそも人がそうみな詩人として生きているわけではないでしょうに。

都会がいいな。東京が好き。都会の孤独な人々のための歌をうたいたい。都会人が通夜もせずに直葬されていく時に、棺桶の中に入れて一緒に燃やしてもらえるような作品が作りたい。

コロッケを食べ終わった後も、しばらくそこで夕暮れをバックにまっすぐ走る電車を見ていた。イヤフォンからはK-POPのテックハウスみたいなアイドルソングが流れていた。私には韓国語の歌詞の意味がさっぱり分からないので、映画のパンフレットを歌詞カードだと思い込んで読む遊びをしたら思いのほか面白かったので、一番お気に入りのフレーズをここで紹介したい。

皆が思うほど20世紀は血なまぐさくない。戦争で1億人死んだだけだ。
ロシアの収容所で1000万人、中国の収容所ではおそらく2000万人、合わせてわずか1億3000万人。
16世紀のスペインとポルトガルガス室も爆弾も使わずに1億5000万人の先住民を消滅させた。
1億5000万人をオノで叩き殺したんだ。教会が支援したとはいえよくやるもんだ
北米ではオランダ、イギリス、フランス、アメリカがそれぞれ5000万人の先住民を殺してる。
合計で2億人だ。人類史上最大の殺戮が北米大陸で行われたがホロコースト記念館1つない 

可愛い女の子のボーカルで、弾むようにこんな歌詞が歌われてたら、やれやれ、そりゃぁ好きになっちゃうよ。