100年の孤独

I only sleep with people I love, which is why I have insomnia

こんばんわ。椎名彩花です。

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貴族のように贅沢な昼寝をむさぼった罰として、夜中に目が覚めた。
のどが渇いて電気をつけようとしたら蛍光灯が切れていて、なんだよもーと思いながら冷蔵庫を開けると、賞味期限がとっくに切れている牛乳が未開封のまま転がっていた。
沸騰すれば飲めるのかなあと思って開けたら嫌になっちゃう匂いがしたから、流しにぜんぶ捨てた。だぶだぶ牛乳を流している間に私は今日の曜日を思い出そうとしてとていた。土曜日と木曜日の間あたりなんだけど、どうにも牛乳と一緒に記憶もだぶだぶと流れ出ているような状態で、いくら考えてもはっきりしなかった。

 

世界をもっとミルキーにすべく、この蛍光灯の切れた台所で、私はひとり牛乳を注いでいる。白く汚れていくシンク、蛇口に乗った水滴が暗がりの中で光っていた。夏の終わりに夜を乳白色に汚していく快感に耽りながら、昼間に家の前を通りがかった女の子たちの会話を思い出して「こんなに暑いと頭おかしくなって人とか刺しちゃう人がでそうじゃない、よく誰も人を殺さないよね」っていう台詞を、お芝居の練習みたいに少しずつ抑揚を変えながら繰り返した。うんうん、と思う気持ちと、暑いと人を殺す気も失せてしまうんじゃないかという気持ちが半々だった。

 

世界が充分にミルキーになった頃、パックの牛乳は空になった。空になった牛乳パックをぺこりと潰して、振り返ると窓からの明かりがテーブルにくっきり四角く、誰かの怒りのようにそれが綺麗だった。