100年の孤独

I only sleep with people I love, which is why I have insomnia

こんばんわ。椎名彩花です。

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先輩が新年会したいって言うから、いいよって言ったら、じゃあピクニックしようって言われて、あんまり意味がわからなかった。コンビニでサンドイッチを買って川沿いを歩いた。ただただ寒かった。どこか座るところを探そうと横を見たら先輩が買ったサンドイッチをもぐもぐ食べていて、食べちゃうんだ・・・って思った。二人で川沿いをもぐもぐ歩いた。冷まされた空はどこまでも無音で、想像を絶して晴れていた。川向うに鉄塔が見えた。
「これってピクニックなの?」ってきいたら、新年会でしょ?って言われた。

 

サンドイッチをもぐもぐしながら、年末に注文したピエール・モリニエの複製画が昨日届いたから自慢したい、って言うから、そのまま先輩の部屋に遊びに行くことになった。

ピエール・モリニエ
1900年生まれ。フランスの画家。写真家。ナルシスト。フェティシスト。
夭逝した妹に対する近親姦と死姦への願望から、自分と、妹の服を着て女装した自分とが交わる絵を描いた。絵具には自分の精液を混ぜた。ピストルマニアで最期は鏡の前で横たわって自らのこめかみにピストルを当ててその引き金を引いた。

2年くらい前に、絵画にはまっているという話はきいたけれど、なんだかすごい所に行きついたな。って思った。きれいな絵ですねって褒めたら、上機嫌で「もっと言って!もっと褒めて!」ってカモン!みたいな感じに両手をパタパタ振ってて可愛かった。
それで、お高かったんでしょ?って言ったら、両手でチョキを二つ作って「じゅういちまんせんひゃくえん!」って目をまん丸く見開きながら言うから、わたしも真似して「じゅういちまんせんひゃくえん!」って言いながら両手でチョキを二つ作った。そのまま二人で向き合って、笑いをこらえながら、目を見開いたままお相撲さんが張り手をするみたいにチョキのまま両手を交互に突き出す不思議な時間が過ぎた。その神聖な儀式が終わると「これでやっと正式にモリニエをお迎えできた」と先輩は大変ご満悦だった。つられて私も笑った。おそるおそる、ちょっと高過ぎない?って聞いたら「いいの」って言って笑ってたから、それを聞いてなんだか安心した。

 

先輩が、祝杯をあげようって言いながら冷蔵庫を開けて、缶チューハイを取り出した。レモンのお酒と、りんごのお酒。二人でそれを飲みながらしばらく絵を眺めた。
モリニエの妹はスペイン風邪で死んだんだって」って先輩が言った。コロナで私が死んだら、先輩はどうします?って聞いたら「死に顔を写真に撮って、それを抱いて一晩眠るわ」って言った。その言葉がうれしくて、私はモリニエを眺めながら心の中で祈った。

どうか私の愛があなたをあたたかくやわらかく呪っていくことがありませんように。そしてどうかこれ以上私を赦さないでください。私を受け入れないでください。美しく稀なるなにかを忘れがちになる私を。