100年の孤独

I only sleep with people I love, which is why I have insomnia

スパイ映画とマンガ映画の話

盗んだ下着をネット通販していたうえに一定金額以上の注文にはオマケとして映画「グリーンマイル」のDVDを付けて発送していた男の「トム・ハンクスの演技がいいからいろんな人に観てもらいたかった」という供述に映画表現の無限の可能性を感じたので、夏休みの間は映画について語ろうと思います。決して気の利いた作り話が思いつかないから他人のフンドシでオナニーしようという訳ではない。※ただしうしじまいい肉のフンドシだった場合はその限りではない。
 
・ミッションインポッシブル・ローグ・ネイション
昨日レイトショーで見たんだけど終了が0時過ぎる回な割に人が入ってて空席を除けばほぼ満員。夏休みだからか。どうりでセックスの匂いすごかったわぁ。邦題は「ミッション・インポっ絞る」だと信じて疑わないし確認する気もない。どんなインポ野郎もエレクチオン必至のアクション超大作!という意味でこれよくない?ヨクナクナクナク以下略。男前な主人公が大迫力のアクションと軽いノリで国際的な淫棒を暴く!ってなノリでワンツワンツー的なアレですよ奥さん。イーサン。もう沢山。(針が折れる音)
SDPを聴きながらこれ書いてるので一部お見苦しい所がありますがご理解ください。登場人物が軒並みカッコよくないのなんだろうなぁ、007がカッコよすぎるからなぁ。本国での評判があんな感じなんでトム・クルーズが二枚目に徹せないのはしょうがないと思うんだけど、その分敵役はもっとカッコよくあって欲しかった。いや、全然悪くはないんだけど、ただテンション上がるほどのカッコよさがあるかと言われると残念ながらそうじゃなかった。イコライザーの敵役のロジアン・マフィアくらいのカッコよさが欲しかったな。あとヒロインがあんま魅力的に映らなかったのもいただけなかった。っていうかヒロインが魅力的に映るような工夫が全然されてなかった気がする。まぁクロエ・モレッツかキャリー・マリガンだったらそんなんいらずとも俺大喜びで尻尾振ると思うんで、個人の趣味で左右されるところかもしれんけど。
ストーリーは見せたいシーンをつなげるためのエクスキューズだと思えないと不満が出るかもしれない。でも見せたいシーンがちゃんとカッコイイのでそこは満足。総合すると「ワララブリーデイ!」とは言わずとも、続編出たらまた見に行くくらいには満足でした。気になる得点は・・・帰りに深夜の赤レンガ倉庫をチャリンコで通り過ぎたらミッションチンポっしゃぶると遭遇したで100点満点! 
 
・バケモノの子
更新するネタがないから恥を忍んで映画批評の真似事とかやってんのに、なんと無謀にも二本立て。いいんだよ。夏休みの映画と言えば二本立てなんだよ。東映漫画祭り世代なめんなよ。こちとら鬼太郎とキン肉マンの二本立てで育ってんだよ。
というわけでバケモノの子なんだけども、これは細田守の劇場版オリジナル作品(サマーウォーズデジモン枠なので除外)に流れる通奏低音的なテーマがくっきりと浮かび上がった一作。
細田守は繰り返し同じ話をしている。例えば過去と未来、例えば社会と自然、例えばバケモノの世界と人間の世界。こういった本来交わらないはずの二つの世界を例外的に行き来する主人公が、部外者として、例外として、どのように世界と相対していくか、また、そういった特殊な出自ゆえにモデルケースがない状態で、どうやって主人公がアイデンティを確立するかというのが細田作品の根幹をなしている。そこにボーイミーツガール(自分だけだと思ったのにお前もかよ的な運命的な出会い)を足して、神がかり的な瑞々しさで描いた日常描写でパッケージングしたのが「時をかける少女」だし、二つの世界を選択するという行為を、主体を兄弟というセットにすることでそれぞれの選択をどちらも等価値に描きながら、同一の価値観を共有する子供時代からそれぞれの意思で独り立ちをする青年期までを2時間の尺の中で見事に描いた上に、それが「『娘の目から見た母』の目線」というメタ的視点で語られ、しかもそれが全く複雑でなく、ともすればその重層構造に気づかれないほどにシンプルにまとまった気持ちが悪いほどの大傑作が「おおかみこどもの雨と雪」だ。雑な発言だが個人的におおかみこどもは「成功した崖の上のポニョ」だと思う。良く出来すぎてて薄ら恐ろしい。こんな優秀な監督の手にかかったら「サマーウォーズ」のようなクソみたいなテーマと偏見にまみれたクソシナリオの映画でさえ面白い作品になってしまうので、これは本当に恐ろしい事だ。まぁテーマがクソで作品が最高というのはジブリの後継として正しいという見方もあるが、今はそこには言及しない。
そんでもって肝心のバケモノの子なんだが、これには驚いた。要約するとやはり二つの世界を主人公が行き来するのだが、おおかみこどもでは並行した位置関係で配置されていた二人の登場人物が、この作品では鏡面的に配置されている。バケモノの世界で人間として生きる主人公が、あくまで人間として、異分子として、衝突を乗り越えながらアイデンティを確立していく。そしてその鏡像関係として用意されたキャラクターは、人間でありながら自分はバケモノだと思って育ち、やがてそのズレに気付き、自分の出自を呪う事になる。これには驚いた。はっきり言ってこれは「在日朝鮮人あるあるネタ」なのだ。朝鮮人としてのアイデンティを持って日本の社会で生きていく人間と、日本人として生きてきてある日自分の朝鮮人としての出自から目がそらせなくなって軋轢に苦しむ人間という二つの類型が在日朝鮮人にはあるのだが、この構図がそのまま当てはまる。
勿論これは偶然だ。細田守がフォーカスしたのはあくまで普遍的なテーマ、「世界と他者のあり方」の類型であり、それがたまたま当てはまっただけの事だが、まぁ見事に当てはまったものだと思う。
そういうわけで、個人的に「バケモノの子」は「時をかける少女」にあった描写としてのフェティシュな喜び、絵が動くという事の根源的な快感は感じないし「おおかみこどもの雨と雪」のような物語の素晴らしさも感じない(当たり前だ。あんなもんは一生に一作品にしてほしい)けれども、なんとも個人的に印象深い作品になってしまったというお話でした。
んでもって気になる得点は・・・帰りに山下公園寄ったらベンチに座ったカップルの前をちんこ丸出し大胆夏モードな浮浪者がケツ掻きながら横切るという場面に遭遇したので100点満点!