100年の孤独

I only sleep with people I love, which is why I have insomnia

こんばんわ。椎名彩花です。

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家の近くに大きな公園がある。切り株のような円形の大きな石造りの椅子がある公園。今日はその公園で本を読んで過ごした。


遅めの昼ごはんを済ませた後、何の予定もないうらぶれた昼過ぎをすりつぶすために、睡眠薬代わりの小説とコーヒーを片手に日なたの芝生に座って本を読む。公園には私と、鳩と、鳩にパンくずをやるおじいさんがいて、陽はあたたかく、風は涼しく、なんだか古い映画のワンシーンみたいだなって思った。
図書館で借りてきた小説は期待通りの退屈さで、私は10ページも読まないうちに芝生に仰向けになって本を顔にのせ、むうむうとうなっているうちに眠くなって、うとうとしていたんだけども、でもそこはうっかり保育園か、それか幼稚園のお散歩コースだったみたいで、そのうちたくさんの園児が先生に連れられて歩いてきた。

 

先頭の先生が寝っころがっている私を見つけて、眠っていると思ったのか、「しーっ!しずかに!」って言った。子供たちは列をなして歩いて、私の横を通るときだけ静かにしていた。私は子供たちのがんばりを無駄にしてはいけないとけんめいに寝たふりをして、本がずり落ちないように頭をぴくりとも動かさずにいて、この、じょうきょう!って思った。
みんな通り過ぎちゃったあとに、そっと起き上がって、おそろしいこともあるものよってどきどきして、子供たちが去っていった方を見たら、列の一番後ろの男の子がこっちを振り返っていて目があったのだけど、手をふったら、ぷいと振り向いて逃げられてしまった。

 

しばらくして日が落ちると、急に寒くなったので、コンビニでお酒を買って、飲みながらわざと遠回りに川沿いを歩いて家に帰った。川ばかりみていた夏だった。同じことをくりかえしくりかえし考える作業は、体の中に水路を掘るようだと思った。血が同じ道を何度でも辿るから、擦り切れて痛くなってしまう。もの思わぬ葦になりたいなあと思った。いや、思ったのだったか、思わなかったのだったか。

 

故郷から遠く遠くまで来てしまった人が、自分の生まれた町の海を、ほんとうにきれいなんだと言っていた事を思い出す。その人は「いつかあそこに帰るんだろうと思う」と言っていた。「浅さと深さで色の違うのが、ほんとうにきれいなんだ」と言っていた。今、私の目の前には川があって、でもそこは私の帰るところでは全然なくて、私は乗り捨てられた自転車を押し倒して座り込みながら、草まみれになりながら、葦になりたいとかぼそぼそ言って、嘘ばかり話して、遠い過去の誰かの優しさに助けを求めていた。

なにが、どうあったって、大切なことは変わらずたったひとつだろう。背中の裏までずっと照らす異様な夕焼けにやさしく血管をつぶされた私は、しばらくの間、身じろぎも出来ずにじっとうずくまって夕暮れの気配が消えるのを待っていた。